カテキョ登録スタッフ研修報告

2022年9月10日(土)


研修内容

ろう学校で働く現役の先生(棚田先生・小学部教諭) 2人を講師に、家庭教師登録者対象の研修を実施。実際に使用されている国語・算数の教材をもとに教員と参加者、双方向にコミュニケーションをとりながら学びました。

視聴者は計11人(ろう塾カテキョ登録者)

勉強・学校〜同じ手話表現の日本語の伝え方〜

導入としてこの2つの「単語」について実際にろう児伝えた内容、どのような反応があったか、どのように伝えたほうがよかったのか、事例をお話いただきました。

具体的には「今日は勉強をしました」を手話で示し、文章を書いてもらった時に「今日は学校をしました」と書くケースがあります。幼稚部から小学部に入るろう児にとって 日本手話ではこの2つの単語のイメージはつくのですが、日本語でこの言葉を伝えるとき、はっきりまだイメージがつきません。

 小学1・2年生は概念の違いを日本手話の表情やCLなど豊かな表現で補い、伝える丁寧な説明指導が必要だとおっしゃっていました。

どんな形?どんな人?

国語の授業の時に長い文章を読むのはろう児小学生で初めての体験

単語一つひとつ丁寧な説明はもちろん。文章問題の方法も工夫が必要であることを学びました。例えば きつつきのくちばしは「どんな」くちばしですか。 この「どんな」の伝え方にも多種多様。 「棚田先生はどんな先生」 という文章問題も先程の「どんな」の使い方・日本語では同じですが、手話での伝え方は同じでしょうか? この日本語は手話ではどのように伝えたらよいか、教員・参加者にそれぞれの伝え方について意見交換しました。

どっちが大きい?

 続いて算数の「大きさ」の問題。大きさを比べるときの数の比較、位の表し方、12+12の手話での計算方法、日本語では伝えきれない手話だからことわかる、数字の大小にについて説明や注意点などがわかりました。

1人ずつ

 こちらも算数の 「並べ方組み合わせ」 の計算問題、例えば「4人でリレーのチームを作り 1人1回ずつ走ります」。この「1人ずつ」の伝え方どのようにするのか。こちらも参加者一人ひとりに手話表現を出し合ってもらいました。日本語に合わせた手話に縛られるとろう児には伝わりません。

 また先頭の1人はそのままで後に続く3人の組み合わせ方はどのように手話で説明するか、算数も文章問題が多く日本語の伝え方に様々な工夫が必要であることを学びました。

ざいりょうとどうぐ

3つ目は工作の事例、「材料」「道具」こちらも手話では同じになります。それぞれどういうものか、手話で出し合いました。そこから派生して人のはたらき、機械のはたらき、自然のはたらき、食べ物のはたらき それぞれの「はたらき」についても出し合いました。

日本語のアウトプットができるかどうかを確認するためろう児から指文字を使って表す、また概念の説明をしてもらった方が良いという話がありました。

抑揚―よくよう―

 続いて小学5、6年の「鳥獣戯画」の解説について文章ピックアップしました。

「はっけよい、のこった」ってどう表現するか。「墨一色、抑揚のある線と濃淡だけ、のびのびと見事な筆運び」の抑揚はどう表すか、それぞれの手話表現について話し合いました。

質疑応答

・「いっぽんにほんさんぼん」など読み方が異なる漢字の教え方

・手話を尊重という話があったが幼稚部ではと音声日本語や日本語対応手話も教えているのかどうか
・歴史上の人物などの名称の覚え方
など参加者から様々な質問がありました。
1つ目の質問は 聴者は音で日本語を覚えると同じようにろう者は書いて繰り返し覚える。日本語は手話と覚え方は別ということを意識し覚えさせる必要があるとわかりました。
2つ目の質問は 幼稚部では「遊び」を中心としている。全員がいるホームルームの場面では簡単な文字や絵を貼って「今日は〇〇だったね」と話をするだけで終わりにしてます。聴覚活用が必要な子どもは個別に発音、聴覚訓練をおこなっているとの話でした。
3つ目の質問はサインネーム(ろう学校内で通じる)や絵を通してその人の人物を覚えるなどしているとの話でした。

まとめ

 おすすめの教材アプリ「ロイロノート」の紹介と共に講師1人ずつ一言いただきました。

「手話」を尊重しつつ日本語を指導する。「手話」を学ぶ謙虚な気持ちを持ってろう児と接する。

ろう児は先生をしっかり見ており、理解したかそうでないか?も反応ですぐわかります。

「これはろう児に伝わりにくかったな」、「この伝え方の方がいいかな」、「この手話でろう児に教えるけど他にいい表現ないかな」と先生同士で話し合うこと、謙虚な姿勢が必要だということ教えていただきました。

講師2人は役割が異なる、管理職と現場の教員という上下関係がありますが、フラットな気軽に話し合える関係性、信頼関係を見ることができました。

引き続き話し合いをしながら進めていく研修あると良いな、と思える研修でした。

貴重な研修をありがとうございました!

講師

棚田茂氏ほか1人

埼玉県立特別支援学校 坂戸ろう学園